とあるリスナーが膝栗毛について語ってくれたのがとても嬉しかったので、どんなインスピレーションを受けたのか記録しておく。
【結論】
長くなるので先に結論を述べておきます。
膝栗毛とは人生のテーマソングです。
【いきさつ】
これは3年前にかいたもので、当時野音の若者のすべてから帰ってきた後になんとなく作った。その日の若者のすべてでは、キタニと小林私とcody・lee(李)と浪漫革命と awesome city clubが出てた(キタニモクで行ったのだがあまりにも出演陣が豪華すぎた)。
【曲の発生におけるインスピレーションとその後の流れ】
キタニモクで行ったのだが、ほんまに全出演陣が良すぎた。そしてここで私は小林私のライブを初めて目撃したのだが、今思えば弾き語り形態でライブをしてる人をきちんとみたのも初めてだったかもしれない。そこで小林私のアクトをみて弾き語りモチベが上がり、そそくさと家に帰って作曲して出来上がったのが膝栗毛。その日の内にフルは完成していたと思うが、時代柄サビだけTikTokに載せた。そしたらまあまあバズり。そしてその後めんどくさがり続けた結果、4ヶ月後にYouTubeにフルを公開(すぐ出せ)。挙げ句の果てにはカポの位置間違えてキーが違う(えぐい)。そしてフル解禁して2年後の2023年にサブスク配信、3年後の2024年に花酔いで配信。マイペースすぎる泣
【歌詞におけるインスピレーション】
・導入と注意点
いきさつは若者のすべてが良すぎた話がミソなだけなのですっ飛ばし、歌詞のインスピレーションについて書こうと思います。その前にひとつ注意点として申し上げておきたいのだが、これは私が受けたインスピレーションであって、みなさんが膝栗毛を聞いて感じたことや解釈したことは全て正しいと思う。曲は世の中に発表された時点でもう私だけのものでは無く、みなさんが各々で感じたり解釈をしたり、二次創作をしていいと思っているので、必ずしも私の解釈をみなさんの解釈に寄与させる必要もないと思っておりますのでそれだけ述べておく。MVも作成してこれは母子関係を表現していますが、これも解釈の一例で、みなさんが膝栗毛を友愛と捉えても、親愛と捉えても、性愛、敬愛と捉えてもなんでもいいですからね。MVはシユさんが監督してくれて本当に良かった。
・膝栗毛のはじまりと作曲方法
本題に入ると膝栗毛は江戸時代からインスピレーションを受けました。吉原をイメージしていて、「愛で死ねたら綺麗かな」というのは遊女が懸想してしまった相手と心中したいという願望のことだと解釈しました。何故自身の曲のくせに解釈しているかというと、自身は作曲するときに大体サビから作り始めることが多く、そしてコードとメロと歌詞の作成を全てその場で同時に行うので、意味先行じゃないことも多いからです。なので私もサビができてはじめて解釈することもあり、サビの歌詞から色んな設定を決めてAメロ・Bメロ等で辻褄合わせをしたりします。膝栗毛もサビから作成して口をついて出た言葉がああいう歌詞でした。曲名は最後につけました。曲名はいつも大体最後です。ちなみにノスタルジアはイントロから作り始めた数少ない曲です。
そしてまた、膝栗毛は吉原とか花街をイメージさせている一方で、人生を形容している側面もあります。後で述べます。
これらの前提の元、各パートごとに色々と述べていきたいと思います。
・曲名
作曲の順序とは異なりますが先に曲名のインスピレーションをお話ししておきたい。
膝栗毛は江戸時代にインスピレーションを受けたのだし、曲名は先述した通り最後につけるので、コンセプトも纏まったので、曲名でも江戸時代を想起させるものがいいなと思い、江戸時代の文学作品を頭の中で巡らせたところ、『東海道中膝栗毛』という語感のいい言葉が私の頭をよぎりました。そして長すぎるので部分的に切り取った膝栗毛という言葉を採用したんだと思います(曲作ってる時って意外と記憶がない)。また、膝栗毛とは言葉の由来が、馬に見立てた自分の膝を使って徒歩で旅行するという意で、栗毛というのは馬の色(栗の色をした)を形容しているので 膝 = 栗毛(馬) という構図になるみたいです。そして人生、つまり己の道は己で歩いていくものなので、人生をマルっと捉えるという意味も含めました。
・1Aメロ
先述したように、サビで設定が定まったのでAメロを作成します。
「花魁気取りで練り歩く国道1号」
というのは、花魁道中を想起させたくて入れ込んだ歌詞ですが、同時に国道1号という東京から大阪をつなぐ長い道路、長い道のようなもの=人生という風にも捉えています。「練り歩く」とは列を作ってゆっくり歩くというという意味で、歩く「練る」という言葉が入るだけで言葉の意味や雰囲気の変容ぶりがすごい
ここの歌詞で私が想起することはもう一つあって、それは江戸時代の礎を築いた徳川家康の遺訓です。
「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。」
「= 人の一生というものは、重い荷を背負って遠い道を行くようなものだ。急いではいけない。」
という遺訓を残したと言われていますが、これも私の頭の中ではキーワードである江戸時代との関連付けが出来るし、ここの歌詞ともリンク出来て個人的には好きです。ガキの頃に偉人伝を読ませる習慣を作ってくれた母には感謝ですね。
あと、そもそも『東海道中膝栗毛』においても、東京から大阪間で旅をしている設定があり、おそらくそこから多分東京と大阪を結ぶ国道1号って発想も出てきたんだと思います。何度も言うようですが作曲の過程って意外と覚えてないことも多くある。もう結構前にかいたということもありますが。
「パトロン気取りで呑み歩くトルソー8号」
これは花街にいるイタいお客様たちのことを揶揄しています。自身は水商売界隈を観察していた時期があるんですけど、売れっ子キャストさんを見ながらそういう感情をしばしば発生させ擬似体験したものです。これは遊女目線、そういったお客様をマネキンや泥人形だと認識しなければやっていけない局面があるのではないかという想像のもとかきました。漫画の『明日、私は誰かのカノジョ』もそういった界隈の解像度が高くて良いです。あとは「パトロン」というワード。とてもTPOや時代によって変わる言葉だなぁと思っていて、私が一番最初にパトロンと聞いて想起するのは西洋美術の画家やバレリーナにパトロンがついているよなぁということなんですけど、現代的には「性的な見返りを求めて異性を支援する人」などがネットで検索するとヒットします。まあここではデカい顔をして遊女のパトロンを気取っているお客様のことを言っています。
余談ですがエドガー・ドガの踊り子の絵にはパトロンエロおやじが散見されるのでよかったら見てみてください。先述したようにこの言葉は時代や局面によって意味も違ってくるので、みなさんも色々とお調べになって自分なりのパトロン像を創り上げてみてください。
「愛が買えたなら〜」
のくだりは自身のセンセーショナルに任せてかきましたので、言葉のまんまです。強いて申し上げるなら、花街ではお金が物を云うところがあるが、お金で遊女の好意や愛を買えると思うなよという遊女なりの心意気(?)のようなものだと思います。
・1Bメロ
「祭囃子が響く ヒトの酸味が滲む」
これは吉原の花魁道中とかお祭りとかを想像しました。人がいっぱいいると汗臭かったりするよね。それを酸味が滲むと表現しています。あと、ヒトというのはヒト科という動物を分類する学名からきてます。吉原には営みがありますからそれなりに汗ばむでしょうということと、性欲に素直になる場所でもありましょうから動物的な形容がしたくカタカナにしました。
「お兄さん方如何? 今夜最後の安売り」
これは吉原閉店間際で遊女たちが男に必死に呼び込みをしている様子です。私がこの言葉を口にするときはステージからお兄さん方に目配せして歌ってるので目が合ったらラッキーだね❗️
また、作ってる最中の私はBメロにキャッチーさを取り込みたい気がしたので、なんとなくここだけ丸サ進行を使ってみたのですが、それ以上にサビのメロがキャッチーすぎたので、果たして私が意図してることは上手く作用したのだろうかと疑問に思っています。
・1サビ
ようやっと設定元のサビに戻りました。
「愛で死ねたら綺麗かな さもしい声で叫んだって結局何も残らないね」
「さもしい」って言葉は語感で選んだのですけど、もっと一般的に馴染みのある「さみしい」で良かったのでは無いかと思う人もいると思いますし、実際時折見かける膝栗毛カバーでさみしいと聞き違えてる人もいました。なぜ「さもしい」を採択したのかというと、現代の「さみしい」という言葉が与える印象って割と多分恋愛のシーンを想起できると思うんですけど、成就しないであろう恋の場合に出てくる「さみしい」って言った側は敗者感があるじゃないですか。敗者がいるってことは一応は自動的に勝者が存在して、客観的に見たら勝者と敗者の二方を前提とした言葉になってしまうと思うんです。だから、「さみしい」とは形容したい対象のみにフォーカスできる形容詞じゃ無いと思って、形容したい対象のみをきちんと形容してくれる「さもしい」にしたんだと思います。
「愛が消えたら静かだな 名も無き声で叫んだって結局何も残らないね」
名も無きというのは、源氏名しか持てず本名もない遊女としてしか生きられないことを表しています。あとは色恋沙汰なんて腐るほど存在していますから、そのうちの一つでありそんなありふれた出来事に名前もつけられることもない、有象無象にすぎないという意味も含んでいると思います。
・2Aメロ
「恋人気取りで食い尽くすモノノ怪1号」
これも1番のトルソーと似たようなもんです
こちらが意図してるのは、お客様が一方的に遊女を搾取しているという構図を切り取った売春シーンです
「王道コードで売り尽くすモリソン6号」
これは個人的にTikTokの音楽に嫌気がさしていた時期だったので、丸サ進行とか代表的なコード進行ばかりでうざいなーと思ってかいた節もあります。別に私も使ってますけどね(笑)
あと江戸時代要素のためにモリソン号事件とかあったなと思ってモリソンぶち込みました。すまん、モリソン。
・落ちサビ
「愛が消えたら静かだな」
落ちサビ静かなんで静かをリンクさせました♪
これは嵐の前の静けさや
・ラスサビ
転調は結局懸想してる相手と心中できなかった、相手と想いは共にできなかったという絶望・悲しみ・怒りなどの感情の昂りですかね。なんかもしかしたら膝栗毛のヒロイン、己だけ死んでるかもしれませんね。とは言いつつ全然生きてる線もあるので各々の解釈ということで。
・アウトロ
口笛は本当に結局何も残らなかった虚しさとか静けさを表したかったので採用しました。あと私は最後のチャチャッ、チャチャッで幕引きをイメージしてます。今まで落語や歌舞伎のようなもの、一つの物語、一つの人生、自分の人生を鑑賞してましたよというような感じ。「これにておしまい、また今度〜」くらいのノリです
あと推測ではあるが、私自身かなり椎名林檎に影響を受けているので、もしかしたら歌舞伎町の女王の口笛とかから知らぬ間に影響を受けていたりするのかなーと後々になって思ったりします。
そして今書いてて思ったのだが、膝栗毛作成後当時自分でもバンドアレンジを考えたりしていて、口笛の旋律をグロッケンにしてオルゴールっぽく導入に使おうとしていたんですが、これはもしかするとオペラ座の怪人のmasqueradeからもインスピレーションを受けているかもしれないと思いました。劇団四季のオペラ座の怪人も最初のオークションのシーンでmasqueradeの旋律でオルゴールが流れるんです。そのあとの劇的な演出が好きすぎる。劇団四季のオペラ座の怪人本当に大好き。
たくさんつらつらと書きましたが、遊女とか花街のシーンだけでなくて、現代や皆様にも当てはめられる部分も沢山あると思うので、皆さんなりに作品を楽しんでほしいです。あとは皆さんの人生のテーマソングになったらいいなと思っています。それではこれにておしまい、また今度。
